研究課題/領域番号 |
18066010
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中野 雅由 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (80252568)
|
研究分担者 |
岸 亮平 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (90452408)
|
キーワード | 非線形光学 / 超分極率 / 開殻分子 / ジラジカル / ab initio法 / 密度汎関数法 / グラフェン / フェナレニルラジカル |
研究概要 |
最終年度である本年度は、開殻分子系の三次非線形光学効果に関連して、動的三次非線形光学物性の一つである二光子吸収(Two photon absorption : TPA)現象に関して、開殻分子系の理論を展開した。結果から、TPAピークは中間ジラジカル性を示す領域で増大し、第一励起状態がちょうど第二励起状態の半分の励起エネルギー準位にあるとき顕著に増大することが判明した。この増大は、二重共鳴による増大である。最大のTPAを与える領域は、基底状態が三重項状態の系の励起状態で中間のジラジカル性をもつ場合であることが明らかになった。以上の結果より、静的な三次非線形光学物性のみならず、共鳴非線形光学物性においても中間ジラジカル性をもつ開殻系が閉殻系に比べて優れた特性を示すことが予想された。新規の開殻非線形光学分子系として、最近注目されているグラフェンナノフレーク(GNF)の開殻性と非線形光学物性との関係についても議論した。これらの系はエッジ形状や幾何構造に依存して異なる開殻性をもつことが理論的に予測されており、開殻NLO系のターゲット分子としても興味深い。我々は、世界で初めて、四角形や六角形など種々の形状のGNFについて、ジラジカル因子と三次非線形光学物性(γ値)との相関関係を検討した。その結果、エッジ形状や幾何構造の制御によりジラジカル性、スピン分極の程度を変化させ、γ値の制御の可能性を示した。また、これら三次非線形光学物性の計算法としてスピン分極型長距離補正密度汎関数法を適用し、そのジラジカル因子依存性やサイズ依存性に関して信頼できる結果を与えることを見出した。今後の大規模開殻系の非線形光学応答の計算への適用が期待される。
|