非線形光学効果は近い将来の大容量・超高速の光通信・情報処理技術の根幹をなす基本物質が持つべき物性として非常に重要である。超分極率は電場による電子の揺らぎやすさの高次の項に対応し、"柔らかい電子系"をもつ分子を設計すれば大きな非線形光学特性が得られると期待できる。本研究では、系内に空間的に異なるスピン相関をもつ複合電子系-開殻分子系-のもつ"柔らかい電子系"という視点から、新たに「スピン分極」を利用する開殻分子系の非線形光学効果の新しい機構(構造.特性相関)の解明と制御可能性の理論的予測を行い、大きな非線形光学物性をもつ新規物質系を提案することを目的とする。これは、スピン多重度、ジラジカル因子、荷電状態を新しい制御パラメータとして、より電子的に柔らかく、電場に対する鋭敏な応答特性が期待される荷電種を含む高スピン開殻分子やジラジカル分子系を新規非線形光学系として捉える立場である。さらに、この効果の1つである二光子吸収については、電子系と分子振動や外場との間の相互作用に起因する緩和過程が重要であるので、電子状態理論と散逸量子論を結合した新しい方法論を開発し、新規な開殻非線形光学物質系の量子設計と物性制御について研究する。
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