クラスレートハイドレートの生成・解離平衡を分子間相互作用のみから予測するために、空洞のゲスト分子による多重占有と安定性評価についての方法を確立した。それに基づいて、高圧でのクラスレートハイドレートの生成平衡に対する予測を行った。大きい空洞にゲスト分子2個まで、小さい空洞にゲスト分子1個までの占有を許すときのグランドカノニカル分配関数から、高圧でのクラスレートハイドレートの各空洞の占有率などを計算する方法を提案し、それをアルゴンクラスレートに適用した。また、メタン・エタン混合ガスと平衡にある包接水和物の安定性を調べた。純粋なメタン若しくはエタンでは構造Iをとるが、混合ガスでは構造IIが、ある組成範囲ではより安定的であることを、分子間相互作用のみから明らかにした。 さらに、近年実験的合成に成功し活発に研究がなされている水素クラスレートについて、シミュレーションにより行った。一般のクラスレートハイドレートにおいては、合成の際の温度、圧力等の条件によって取り込まれる分子の物質量が変化するが、本研究では決められた条件における、クラスレートのケージの水素分子による占有状態をモンテカルロシミュレーションを用いて調べた。水素クラスレートは構造IIの大小二種類のケージからなる結晶構造をとり、実験による結果からケージの多重占有が指摘されていたが、今回のシミュレーションからは小ケージは圧力に関わらず単一の水素分子に占有されるのに対し、大ケージの方は圧力の変化に対し占有数が大きく変化するという結果が得られた。
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