研究概要 |
多くの有機化学反応や生体内反応は溶液中で進行するにもかかわらず,溶媒が分子としてどのように反応に関与しているのか,明らかになっていないことが多い。反応を予測あるいは制御し,さらにはその物質や生体高分子の機能を制御するためには,溶媒分子の関与を定性的だけでなく定量的に,またエンタルピーだけでなくエントロピーも明らかにする必要がある。本研究課題は,有機化学反応や生体内反応の反応予測や反応制御をおこない,物質や生体分子の機能制御をおこなうための方法論を確立することをめざしている。 溶媒としての水は,ある温度においてゆるやかな集積体を構成している。水クラスターの場合、そのクラスターとしての性質は,構造最適化およびその構造での基準振動解析という計算化学の常套的手法から得られるものとは異なる。クラスターとしての性質を明らかにするために、MC法から得られる大量の座標データを、水素結合パターンの概念を利用することによって分類する、という新しい方法論を提出した。すなわち、水クラスターのアンサンブルをトポロジー的に分類する。それによって、トポロジーの異なる水クラスターの自由エネルギーやエントロピーを求めることができる。クラスターに対して、ポテンシャルエネルギー曲面上のエネルギー極小の構造から得られる概念とは異なる、実在系に対応する概念を提出した。 また,酵素等の反応設計をめざすために、ONIOM法と分子動力学(MD)法を統合した新たな方法論であるONIOM-MD法を開発し,汎用量子化学計算プログラムHONDOに組み込んだ。
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