研究概要 |
多くの有機化学反応や生体内反応においては,反応の進行に多くの因子が関与している。反応を予測あるいは制御し,その物質や生体高分子の機能を制御するためには,活性中心にある分子に,そのまわりの因子がどのように関与しているのかについて明らかにする必要がある。有機化学反応や生体内反応の反応予測や反応制御をおこない,物質や生体分子の機能制御をおこなうために、化学反応に直接関与する部分をQM(quantum mechanics)で、その他の部分をMM(molecular mechanics)で取り扱うQM/MM法を用いた。 ハイブリッド分子動力学法であるONIOM分子動力学法を開発し、そのシミュレーションを,生分解性プラスチックを分解する酵素の反応機構に適用した。その結果、この酵素の高い触媒活性の原因は、Thr17の側鎖のOH基の電子的効果であることが見いだされた。そこで、Thr17をAlaに替えた突然変異体をつくったところ、触媒活性が著しく低下することを実験的に確かめることができた。すなわち、シミュレーションによって、反応制御を行うことができることを実際に示すことができた。 水和効果に敏感なアミノ酸に対して、水溶液中における自由エネルギー計算を実行し、アミノ酸の異性化による自由エネルギーの差を求めた。自由エネルギー差は、モンテカルロ法で得た水和構造のアンサンブルに対し、自由エネルギー摂動法を実行することにより計算した。また、QM/MM計算に基づくMD法計算のトラジェクトリーから、水溶液中におけるIRスペクトルを求めた。
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