遷移金属はエネルギーの非常に近いns軌道と(n-1)d軌道に電子配置を持つため、狭いエネルギー範囲に複数の電子状態が存在する「複合電子系」である。複数の電子状態ポテンシャルエネルギー面が関与するこのような反応系において、電子配置・電子状態と反応性の関係を実験的に解明することを目的とした。具体的には、電子状態を選別した遷移金属原子と反応分子を特定の反応エネルギーで衝突・反応させ、生成物の量子状態を選別した反応断面積・角度分布を測定することを目指した。この結果を、電子状態・反応ダイナミクスに関する理論計算へフィードバックして、「複合電子系」における電子状態ポテンシャルエネルギー面の間の相互作用の実体を解明できると計画した。
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