研究概要 |
1.ランタノイド系4f電子は、外側から5s、5p電子に遮蔽され、周囲の環境の影響を受けにくく、4f^N準位内の遷移(f-f遷移)の吸収波長、振動子強度は分子環境の違いに影響されにくい。しかし、超敏感遷移と呼ばれるいくつかのf-f遷移は、周囲の環境によって振動子強度が大きく影響されることが知られている。本研究では、この超敏感遷移の振動子強度が特に大きくなる三ハロゲン化物LnX_3の振動子強度をスピン軌道CI計算で計算し定量的な値を得ることに成功した。この波動関数の成分を調べた結果、配位子内の分極型励起、および配位子から金属へのLMCT型電荷移動が重要であることが明らかとなった。 2.ICN分子の光解離生成物CNの回転準位に見られる微細構造準位分布を調べるため、光解離に伴って生じる解離極限におけるド・ブロイ波の位相を分解経路に沿って積分して求めた。フランク-コンドン領域において、基底状態1A'から遷移した2つの準位を経由して解離した成分が量子干渉を起こすというモデルを考え、4A'と3A'における計算結果が実験で得られている特徴をよく再現した。 3.LCD(液晶表示装置)に使われているヨウ素をドープしたポリビニルアルコールフィルム(I-PVAフィルム)中には、I^-,I_3^-,I_5^-が含まれるとされる。I-PVAフィルムが偏光特性を解明すべく、特にI_5^-の励起エネルギーと遷移モーメントについて調べた。X線解析の結果を参考にしてI-I結合距離が3.10Aの直線分子として計算したところ、強度の強いピークの励起エネルギーは2.4,3,2eVといずれも平行遷移で、偏光特性を良く説明する結果を得た。
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