研究概要 |
本研究では,(1)電子状態理論と分子動力学(MD)法を組み合わせた非経験的分子動力学(AIMD)法を方法論的に発展させ,応用可能な新しい研究対象を提供すること,(2)原子核と電子の波動関数を同時に求める理論の拡充による原子核の量子効果を考慮したダイナミックスの発展を目指してきた。本年度は(A)AIMD法と組み合わされる大規模電子状態理論計算の高精度化を行った。具体的には、昨年度までに開発した分割統治(DC)電子相関計算手法を、現在広く用いられている計算手法のうち最も高精度である1・2・(摂動的)3電子励起結合クラスター(CCSD(T))法に適用した。また,(B)エネルギー計算だけでなく大規模系の周波数依存分極率を求めるための計算手法を開発し、大規模系の光学応答を理論的に検討した。(C)通常の交換相関汎関数を用いた密度汎関数理論(DFT)計算では正しい記述ができない弱い相互作用に対しても、局所応答分散力(LRD)法を開発し、その欠点の克服に成功した。(D)電子ダイナミックスを研究するための計算手法である実時間発展(RT)時間依存密度汎関数理論(TDDFT)法の開発も行った。さらに、研究代表者らが提案した内殻励起状態に適した交換相関汎関数にRT-TDDFT法を対応させた。本研究では実在系に対する様々な応用計算を想定しているため,計算結果の効果的な解析手法の充実も同時に検討した。本年度は(E)凍結軌道解析による励起エネルギーの解析を行った。
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