研究概要 |
(1)ナノサイズの複合電子系で重要になる非共有結合相互作用を計算コストが小さくて簡便に精度高く計算できる量子化学法は2次のMφller-Plesset摂動(MP2)法であるが、分子が大きくなると計算負荷が急激に増大してしまうという問題がある。このために、MP2エネルギー計算の高速・高並列アルゴリズムを開発し、現時点で最高速のプログラムを作成した。また、MP2エネルギーの核座標に関する微分計算の新しいアルゴリズムの開発とプログラム作成を行い、ナノ分子の構造が決定できるようした。このアルゴリズムは高速化と高並列化の両方を満足し、各CPUに必要とされるディスク量はCPU数がNならば1/Nとなり、通信量はCPU数に関係なく一定で、中間データをすべてのCPUに転送する必要もないのが特徴である。Pentium4 3.2GHzクラスターを使用したタキソール分子(C_<47>H_<51>NO_<14>)のベンチマークでは、32CPUでスピードアップは30-33倍となり、基底関数の数が1000前後ならエネルギーと微分計算は約2時間(SCF計算を加えても約2.3時間)で終了する。dual-core Xeon 3.0GHzクラスター(80CPUcore)でも、並列加速率は上がり続けるので、大規模計算にも適用できることを実証した。今後、ナノサイズの複合電子系への応用計算を進めていく予定である。 (2)アセチレンの高周期.14族元素類似体RMMR(M=Si,Ge,Sn,Pb)の結合特性を明らかにして、サイズが大きい分子では結晶中と溶液中では構造が異なることを指摘した。また、金属内包フラーレンやカーボンナノチューブの化学修飾により機能化を進めた。
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