研究概要 |
(1)ナノサイズ分子の量子化学計算の高速化:ナノ複合電子系で重要な働きをする非共有結合相互作用を精度高く取り扱えるように、同スピン間と異スピン間の電子相関に異なるスケール因子を用いるSCS-MP2(spin-component-scaled second-order Moller-Plesset perturbation)法のエネルギー微分計算の高速並列プログラムを作成して、構造決定ばかりでなく反応経路や遷移状態を計算できるようにした。周期系のバンド計算は、計算コストが低いのとプログラムが容易なので、ほとんど例外なく密度汎関数理論法によっているが、ナノ複合電子系で重要な非共有結合相互作用を取り扱えない。このために、MP2法による周期境界条件計算プログラムの開発に着手している。 (2)高周期典型元素の多重結合の構造と反応:非常にかさ高い置換基によって安定化されたアセチレンの高周期14族元素類似体RMMR(M=Si,Ge,Sn,Pb)の構造特性と特異な反応を明らかにした。 (3)ナノ分子の構造と機能:サイズの大きい分子が与える外部表面と内部空間は新しい機能発現として有用である。このために、金属内包フラーレンのLa_2@C_<80>のシリル化による内包金属の二次元ホッピング運動、Sc_2C_2を内包したC_<80>フラーレンの新規な構造と化学修飾、ナフタレンのカーボンナノチューブ表面への吸着の選択性へのホールドーピング効果、(ZnO)_nクラスターの構造と成長プロセス、ZnOナノチューブの構造と安定性、AlNナノワィヤーとカーボンあるいはBNナノチューブからなるナノケーブルの構造と電子特性、外部修飾による金属性カーボンナノチューブと半導体カーボンナノチューブの分離を理論計算で明らかにして実験と共同して解明した。
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