研究概要 |
【ナノ複合電子周期系の量子化学計算の高速化】周期構造を持つポリマー、ナノチューブ、固体表面、分子結晶における物理吸着などでは、非共有結合相互作用が本質的な役割をする。しかし、汎用的に広く用いられている密度汎関数理論計算法は、この相互作用を上手く取り扱うことができない。このために、20年度に高速化したRI (resolution of identity)近似による2次のMoller-Plesset摂動(MP2)法を、ポワソン・ガウス混合補助基底を用いることにより大きな周期系の計算に実用的に適用できる方法を開発した。 【高精度計算法の開発】これからのナノ複合電子系の計算化学では、Schrodinger方程式の近似的な解ではなく正確な解が望まれる。このために、我々は電子配置をウォーカーとしてサンプルする新しいプロジェクタモンテカルロ法を開発して、どのような試行波動関数を用いても基底状態ばかりでなく励起状態のfull-CI解を得られることを実証した。このプロジェクタモンテカルロ法の利点は、分子のサイズが大きくなるにつれて顕著になり、full-CI法より優位性が格段に大きくなる。 【ナノ複合電子系の構造、反応、機能】ケイ素-ケイ素三重結合の特異な反応、新規なガリウムーガリウム結合の生成、ゲルマニウムやスズの二価種によるH_2やNH_3の活性化、5配位ケイ素間の初めての安定な結合、穴構造をもつC_<60>へのメタン貯蔵、金属内包フラーレンの異法的磁気挙動、化学修飾によるフラーレン内部での金属の位置と回転の制御,電子供与性分子の吸着によるカーボンナノチューブの選択的還元、ナノグラフェンの特異なスピン効果と酸化体の反応機構等を理論計算あるいは実験と共同して解明した。
|