ナノサイズの複合的電子系がもたらす構造、電子状態、機能の解明のための研究方法は急速に変化している。これまでは実験を主体とする試行錯誤的な方法に頼ることが相当に大きかったが、理論と計算によるアプローチが強く望まれている。現在、小規模な分子の理論と計算は実験に並ぶあるいはそれ以上に有力な方法として進展してきているが、ナノサイズの複合的電子系への適用拡大と実用汎用化は重要な課題となっている。本研究では、ナノ複合的電子系の分子理論を進展させると同時に精度の高い量子化学計算シミュレーションを高速に実行できる計算アルゴリズムとプログラムを開発して、理論と計算に先導された研究法を確立する。そして、理論計算から実験へという研究の流れを日常化する。このために、フラーレン、カーボンナノチューブ、ナノグラフェン、分子カプセル、酵素反応等を取り上げて、ナノ複合電子系がもたらす新しい構造と機能を開拓する。
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