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1. 表面吸着分子系の電子物性や電子ダイナミックスをミクロレベルで理解するために、吸着系と表面の間で起こる電子エネルギー散逸の効果を考慮に入れた新しいクラスターモデル(OCM)理論の開発を行った。OCM理論に基づいて表面吸着モデル系に対する断熱ポテンシャル曲線を描くと、吸着種由来の電子状態と表面電子状態が透熱的に分離しており、少数の透熱ポテンシャル曲線が系のダイナミックスを支配していることが分かった。そこで実際に少数の透熱ポテンシャルを抜き出し、そのポテンシャル曲線上で核波束ダイナミックスの計算を行い、表面吸着種の光誘起振動励起メカニズムの解明を行った。特に光励起後に引き起こされる吸着種のコヒーレントな振動運動の詳細な解析を行った。
2. 電気化学反応を分子レベルで理解するために、有限温度密度汎関数理論に基づいた化学ポテンシャル(μ)一定の電子状態計算手法の開発を行い、この計算手法を電気化学環境下におけるNO分子の電子状態計算に適用した。長距離補正を施して微分不連続性を満たした汎関数を用いれば、電気化学的環境下にある分子の電子状態計算を正しく行うことができることを示した。
3. 量子ドット列におけるエネルギー散逸を伴う励起子移動の理論的研究を行った。量子ドット列の各サイト間のエネルギー移動を議論する場合、しばしば個々のサイトの固有状態を基にしたサイト基底表現が用いられる。しかし、厳密には量子ドット列全系のハミルトニアンを対角化した固有値基底表現を使わなければならない。過去の学術論文等で頻繁に使われているサイト基底表現は、固有値基底表現を基に低次の摂動展開の結果導き出されることを解析的に示すことができた。また、サイト基底表現では、熱平衡状態が実現しないことやエネルギー的に禁制であっても励起子がポテンシャル井戸の外に飛び出てしまう等の物理的に奇異な結果を導き出す恐れがあることも分かった。
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