研究概要 |
多体相互作用を持つ無限レンジ・スピングラス模型で記述されるソーラス符号と呼ばれるクラスの誤り訂正符号に対し, 横磁場項を導入した量子版のベイズ最適解に関する統計的性質を調べるための第1歩として, 昨年度までに得られた1段階レプリカ非対称解についての相図に対し, ゼロ誤り限界(シャノン限界)と強磁性-スピングラス相転移点の関係についての普遍性を明らかにするため, その限界を達成するための具体的復号アルゴリズムを修正TAP平均場方程式に基づき構成し, そのアルゴリズムの収束限界/収束速度を調べた(Inoue, Saika and Okada). また, 無限レンジ・反強磁性横磁揚イジング模型の相転移に関し, 解析的および計算機実験により有限温度, 有限横磁場では相転移が生じないことをつきとめた(Chandra, Inoue and Chakrabarti). これらの結果はそれぞれ2008年9月に開催されたInternational Workshop on Statistical-Mechanical Informatics(IW-SMI2008)で発表された. また, 縮退した系において量子アニーリングを適用すると, 古典的なアニーリングで得られるような各縮退状態が等確率で得られることがなく, 偏りが生じることがいくつかの先行研究により指摘されていた. そこで, 我々はJ1-J2模型と呼ばれる基底状態に縮退を持つような量子スピン系の基底状態近傍のエネルギースペクトルをスピン波理論により調べ, この量子アニーリング特有の縮退状態の実現確率の偏りが, このスペクトルの情報から部分的に説明できることを示した(Saika and Inoue). この結果は2009年3月の米国物理学会March Meetingで発表された.
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