研究概要 |
(1)ランダムグラフ上の彩色問題の有限温度相転移 ランダムグラフ上の2つの隣接する頂点に同じ色を置かないように彩色する問題は典型的な制約充足問題であり,近年物理の分野でも積極的に研究されている.我々はその問題を統計力学の典型的な問題である反強磁性ポッツモデルと対応させ,有限温度における統計力学的性質を調べた.各頂点の平均結合数をパラメータとしたときに幾つかの特徴的な相が現れることが予想されていたが,我々は有限温度においてある相が安定に存在することを見出した.平均結合数が十分大きいところに現れるスピングラス相は,絶対零度である元の問題の彩色可能-不可能転移とはずれた領域に存在することが明らかになり,また特徴的な1段階レプリカ対称性の破れた相とよく似た性質を示すことがわかった.このことを直接数値計算で確認したのは我々が初めてである. (2)二温度系の相転移の解析 前年度までに研究を進めてきた二温度系の関して,本年度は実空間くりこみ群の解析を行った.これまでに情報統計力学の文脈でくりこみ群による解析は精力的には行われてこなかったが,計算ツールとしての確立は今後の展開を考えたときに重要であると考えた.本年度は最も基本的なスピングラス系を含む二温度系に対して相図の解析を行った.二温度の方向に関するくりこみ群の方程式を書き下すことは成功していないが,それ以外ではくりこみの流れを解析することはでき,幾つかの典型的な固定点を見つけ,それらの相を同定することに成功した.
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