研究概要 |
以下の研究を実施した. (1) レプリカ拡張による線形不等式制約充足問題の解空間の構造解析:±1の2値変数に関するランダムな線形不等式制約充足問題の解空間の構造をレプリカ拡張の枠組みにより解析した.その結果,論理式充足問題,グラフ彩色問題など従来研究で広く知られている問題群とは異なり,解空間の構造が下に凸のcomplexity関数(純状態エントロピー)で特徴付けられることがわかった.この結果は,J. Stat. Mech. (2009) P12014として発表された. (2) ランダム疎グラフ上のスピングラスモデルにおけるレプリカ対称性の破れの数値的検知:レプリカ対称性の破れ(RSB)が生じることが理論的に示されているランダム疎結合グラフ上のスピングラスモデルに対し,RSB状態への転移条件が数値実験のデータによってどのように特徴つけられるのか,という観点から吟味し以下の結果を得た.I)磁場なしのモデルについては,転移点は従来理論で予想されている有限サイズスケーリング関係式で精度よく特徴付けられることが実験的に確認された.II)一方,磁場を加えたモデルに対しては,実験データは理論的に予想されているスケーリング関係式とのずれが非常に大きいことがわかった.また,その原因が自由エネルギーに関するへシアンの固有値分布の端の有限サイズ効果と強く関係していることを示す実験結果を得た.この結果は,Physical Review B誌にて発表されることが決定している.
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