研究概要 |
本年度は,通信路の状態に関する情報が既知でない状況におけるCDMA通信路モデルの解析的な性能評価について検討した.実際の無線通信においては通信路の状態が既知でない状況が普通であるため,このような問題設定のもとで検討を行うことは重要である.まず,パイロット信号を使った通信路状態推定法を組み込んだいくつかの方式について情報統計力学にもとづく解析を行った.具体的には,線形剛MMSEにもとづく通信路推定,マルチユーザ検出,個別データストリームの復号を反復する方式,線形MMSE通信路推定を行った後にマルチユーザ検出と個別データストリームの復号を反復する方式,線形MMSE通信路推定,マルチユーザ検出,個別データストリームの復号をフィードバックなしで順次行う方式,さらにマルチユーザ検出を線形MMSEで行うことで簡略化した方式,以上の4方式を対象とし,通信時間におけるパイロット信号の比率に対してそれぞれの方式のスペクトル効率がどう依存するかを評価し,比較を行った.低負荷時には各方式間で性能にあまり差がみられないが,高負荷時には大きな差が生じることなどを明らかにした.次に,パイロット信号の代わりに非一様な確率でシンボルを生成することで情報の伝送と通信路状態の推定とを同時に実現する方式についても解析的性能評価を行った. 本年度の研究計画策定時点ではCDMA通信路やMIMO通信路を特別な場合として含むランダムベクトル通信路モデルの解析的性能評価ならびに並列干渉除去アルゴリズムの解析を進めることとしていたが,これらについては本年度は新規な結果を得るに至らなかった.
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