研究概要 |
少ない量のデータから安定したバイオインフォマティクス解析を可能とする手法を情報統計力学に基づき開発している。具体的には, 対象データに適切な階層型モデルを導入したベイズ推定法および多数の情報源を統合するための統計的学習法を開発している。 1. 遺伝子発現プロファイルおよびタンパク質活性時系列データの解析法 遺伝子発現プロファイル(入力ベクトル)からの複数種類の癌(ラベル)の分類を可能とする判別分析法および特徴抽出法の開発を行った。教師あり多値ラベルから二値判別器の出力ラベル(二値ベクトル)への変換を歪みあり伝送路と定義し、その伝送路に当てはめた確率モデルをデータから同定することで、新しい入力の多値ラベルを復号する枠組みを開発した(Takenouchi and Ishii, 2008 ; Takenouchi and Ishii, to appear)。教師あり特徴抽出は、バイオインフォマティクスの重要課題であるが、次元(説明変数)が多数であり、かつ次元同士に隠れた相関があるような場合に有効な方法は発展途上であった。今年度は、最適発見手続き(ODP)を確率モデルが隠れた階層構造を持つ場合に拡張を行うことで、説明変数同士が隠れた相関を持つ場合にも有効な統計量の導出を行い、また階層ベイズ推定との関係について理論的な結果を得た(Oba and Ishii, submitted)。タンパク質活性時系列と細胞の局所挙動との時空間相関解析を行う手法を開発し、RhoファミリーGタンパク質により制御される細胞膜の局所挙動のシステム同定問題に適用した(Tsukada, et al., 2008)。 2. ベイズ超解像に関する研究 画像超解像を隠れ層のある事前分布または尤度を持つようなマルコフ確率場として定式化した。階層ベイズ推定に基づき、パラメータの曖昧性を評価した上で,複数の低解像度画像から高解像度画像を得る手法を開発した(兼村,他,2008 ; Kanemura et al., to appear)。一分子蛍光イメージングにおいて、顕微鏡による観測画像面内に蛍光分子が1つであるか2つであるかを評価する統計的推定法を開発したので、今後実データに適用していく。
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