研究概要 |
平成21年度は,最終年度であることから,これまで本特定領域研究で得られた確率推論と情報工学への応用に関する結果について誌面,口頭発表を中心として外部へ発表し,まとめを行った.主に以下の3つに関する発表を行った.特に1,3,は本特定領域期間中に他の計画研究との間の交流から生まれたものである. 1. 情報通信班,生命情報班との会議を通じた交流の中から機会を得て,単一の神経細胞が単位時間に伝達できる情報量の上限,すなわち通信路要領を理論的に示す研究を行った.この古くから考えられてきた問題に対する数学的基盤を作る結果が得られた.本年度はその成果について,国内および国際会議,さらに論文誌での発表を行った.この研究についてはメルボルン大学のJonathan H.Manton教授と共同で行った. 2. 体を動かす際に脳から筋へ送られる指令をどのように計画するかという,運動指令の計算手法に関して,脳内の情報表現の立場からの新たな提案を行った.この結果については国際会議,国内会議において発表を行った.この研究は電気通信大学の阪口豊教授と協力して行った. 3. 生命情報班の石井教授の研究に機会を得て,二値判別機を組み合わせて多クラス判別を行う方法についても研究を行った.ここでは統計学的立場から問題を再検討し,数学的基盤を構築した.この結果については会議で発表を行い,原稿を提出した. また,この他にもこれまで行ってきた情報幾何学に基づく統計力学的手法の解析に関して米国から招待され,講演を行った.本特定領域で行った研究は既存の結果を単に発展させたものではなく,新たな視点からの新規の結果である.特定領域を通じてこのように新たな視点からの結果を得たことは,今後,新たな研究をおこなっていくために重要であった.
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