本年度においては、超伝導多層導波路の基本構造の一つとなる超伝導4層構造でのインダクタンス評価を行った。具体的には、4層構造の最下層を超伝導グラウンドプレーン、最上層および下から2層目を超伝導配線、上から2層目を超伝導シールドとし、超伝導シールドの形状およびグラウンドプレーンへの接地位置や接地ポイント数等を様々に変化させた構造において、超伝導配線間の相互インダクタンスを数値計算および実験により求めた。数値計算においては3次元形状対応インダクタンス抽出プログラム"FastHenry"を、実験においては超伝導Nbジョセフソン集積チップでの超伝導量子干渉素子測定を利用した。 数値計算および実験の結果、超伝導シールド層の接地の仕方により、超伝導配線間の相互インダクタンスが変化することが確認された。接地をする際には、特に超伝導配線方向と平行な方向にシールド電流が流れるように接地ポイントを配置することで、磁気シールド効果が向上することが明らかとなった。シールド電流分布については、数値計算プログラムの表示機能により確認された。これらの結果については、3月下旬の電子情報通信学会で口頭発表予定であり、また学術論文誌への投稿準備中である。 また、上記の研究と並行して、本研究領域内での研究協力体制、特に横浜国立大学・吉川研究室と名古屋大学・藤巻研究室の支援により、超伝導集積回路設計環境(素子パラメータ最適化ツールやレイアウト設計ツール等)の立ち上げを行った。
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