低消費電力性と高速性を特長としていた単一磁束量子(SFQ)回路では、近年、受動配線中をSFQに伴うインパルス信号を空間的に局在した電磁波として伝搬させる技術が確立した。この技術を利用すると、さらなる高速化と低消費電力化がもたらされる。本研究では、その際の障害となっていた大きな占有面積の問題を解消し、高集積化に適した構造を提案・実証することを目的としている。具体的には、従来のNbに代わりNbNを電極として用いることでジョセフソン接合のインピーダンスを向上させ、それに繋がる受動線路幅を細くすること、さらにその接合自身に外部シャント抵抗の必要のないセルフオーバーダンプ特性を持たせる作製プロセスの確立を目指している。 平成19年度は、セルフオーバダンプ特性を持ったNbNジョセフソン接合を得るために予備実験を含めさまざまな方面から検討を行った。その結果、構造としてNbN/n-NbN/AlN/NbN構造を導入することに決定した。n-NbNは動作温度である4Kにおいても常伝導特性を示すNbNで、臨界温度15Kを示す超伝導NbNとは窒素含有量が異なる。トンネル障壁として採用したAlNとNbNの間に置くことで準粒子の供給が行われ、セルフオーバーダンプ特性を示す。これまでに、Nb/AlN/n-NbN/NbN構造のジョセフソン接合において、狙い通りのセルフオーバダンプ特性を得ることに成功した。これは、n-NbN層が準粒子供給層として働くこと、AlN層がトンネル障壁層として機能していることを意味する。また、H20年度以降に必要とされる微小接合のためのサブミクロンパターン形成技術、接合作製プロセス技術の開発も行った。このようにこれまでのところ研究は計画通り順調に推移している。
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