本研究ではジョセフソン接合の高性能化(高速化、高インピーダンス化)により、現在の2-4倍の速度向上と1桁以上の高密度を具現化することを念頭にNbN/NbN_x/AlN/NbNセルフオーバーダンプジョセフソン接合技術の開発を行っている。また、局在電磁波集積回路の応用としての検出器システムの構築、さらには特定領域研究内の他のグループと共同で臨界温度の高いMgB_2ジョセフソン接合の作製・評価も手掛けた。 NbNジョセフソン接合は、NbN/AIN/NbN構造が基本となる。平成21年度は、NbNの形成法をRFマグネトロンスパッタ法から直流マグネトロンスパッタ法へ変更し、電極となるNbN薄膜自身の高品質化を図った。凹凸、超伝導臨界温度、抵抗率とも高品質薄膜を報告している他の文献と同等の値まで向上させることに成功した。また、AlNトンネル障壁形成法を1-2nmの超薄膜の堆積からAl薄膜表面の窒化へと変更した。この窒化にはRFプラズマを用いているが、試料にはイオンではなく窒素原子のみが到達するように工夫した。これにより、良好なトンネル障壁層が形成されることが分かった。このほか、NbN/NbN_x/AIN/NbN構造で比較的良好なセルフオーバーダンプ特性を持つジョセフソン接合の形成にも成功している。 MgB_2接合については、トンネル障壁層にホウ素薄膜を用いたものについて、マイクロ波特性、磁場特性を調べ、確実にジョセフソン接合が形成されていることを確認した。 検出器システムについては、検出器として超伝導トンネル接合もしくは超伝導転移端センサを利用することを想定し、そこに用いる局在電磁波集積回路の評価を行った。実際のシステムでは複数の検出器が配置されるが、システムの簡略化のため信号入力のあった検出器のみを自動的に選択する回路が不可欠となる。平成20年度はこの回路の動作実証に成功した。
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