研究概要 |
(1) 研究の目的 : DNA二重鎖切断はかって電離放射線照射により誘発される特殊なDNA 損傷と思われていた。しかし、ATM/ATR キナ-ゼによるリン酸化を受けるヒストンH2AX のリン酸化抗体を用いた最新技術では、従来の生化学的方法の数百倍-数千倍の感度増加により、細胞内に発生したわずかなDNA 二重鎖切断も検出可能になった。この結果、紫外線やDNA 鎖架橋剤などの環境変異原もDNA 二重鎖切断を誘発することが我々や他の研究者により次第に明らかとなった。そこで、本研究は各種の環境変異原によるDNA 二重鎖切断発生の検証と防御機構の破綻によるゲノム不安定性、その解析結果を変異原性の検出と予防に資することを目的とする。 (2) 研究の方法 : (1) 生理学的濃度の電離放射線、紫外線(UVC, UVA)、多環芳香族化合物(1-ニトロピレン、1.8-ジニトロピレン、ベンゾ「a」ピレン、3-ニトロベンズアントロン、4-アミノビフェニル)トポイソメレ-ス阻害剤(ゲニステン、エトポシド)、DNA 架橋剤(ソラ-レン、マイトマイシンC)、アスベスト(クリソタイル)等で処理後、細胞周期依存性を確認するためにH2AXリン酸化抗体を用いて免疫染色を行った。また、BrdU との二重染色を行う。(2) 環境変異原処理後の損傷乗り越え合成を酵素Pol etaのフォ-カス形成能および本研究で開発された損傷乗り越え合成アッセイ系を用いて測定する。また、ゲノムDNA シ-クエンスによる遺伝子突然変異の性質を検討する。(3) 環境変異原処理後のSMC1 経由チェックポイントを検討する。(4) ヒストンH2AX やH2Bの化学的修飾と相同組み換え能との関係を検討する。
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