研究課題
コヒーシンそのものの酵母、ヒト細胞に於ける動態の解析とコヒーシンローディング因子であるScc2、確立因子としてのEco1について精力的に解析を行ってきた。ヒトの染色体動態を明らかにするためにChIP-chip法を確立した。ヒトに於いて、コヒーシンの局在を解析したところ、その局在はほぼ全て、インシュレーター因子であるCTCFの結合部位と一致した。この共局在の生物学的意義を確かめるため、CTCFノックアウトおよび、Rad21(コヒーシンのサブユニット)ノックアウトを行いそれぞれの局在を観察した。CTCFの欠損は直接的か間接的かは不明であるが姉妹染色分体間接着確立の欠損を引き起こし、コヒーシンの結合部位が変化した。一方、コヒーシンのノックアウトでは、CTCFの部分的な脱落が示唆されるデータを得た。コヒーシンの転写に於ける機能を探るためにCdLs(コルネリアデランゲ症候群)の細胞を用い、幾つかの遺伝子の転写について正常細胞と比較したところ、近傍にコヒーシン結合サイトを有するIgf2を含むいくつかの遺伝子で亢進が見られた。現在、CdLsのかかる領域での染色体構造の変化を解析している段階にある。出芽酵母コヒーシンについては、特に接着確立因子であるEcolとM期にコヒーシンの解離を促進する因子であるCdc5キナーゼについて、前者については全ゲノムアレイを用いたSNPを利用した抑制変異体の遺伝学的解析を、後者については染色体上への局在原理を解析した。Eco1については抑制する変異として、現在までにrad61、pds5、scc2が得られており、このうち、rad61はeco1の欠失を完全に抑制できた。それぞれについて、抑制のメカニズムを解析している段階にある。Cdc5については、その結合をChIP-chipにより明らかにしたところ、セントロメア以外のコヒーシンとその局在が一致したが、セントロメアにはほとんど局在が見られなかった。現在、Cdc5が接着を確立したコヒーシンにのみ結合するという仮説の元に解析を進めている。この他、海外との幾っかの共同研究を通して、コヒーシンのローディングの分子機構、減数第一分裂時のキネトコアのコヒージョンの保護機構、Smc5,6のローディング機構について新しい知見を得た(Mol.Cell、2006)。
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