研究課題
1) 脂質二重膜中に形成される生理活性物質の分子複合体の構造:抗生物質・アンフォテリシンB(AmB)は脂質二重膜中で自己組織化してイオン透過性チャネルを形成する。本年度は、これらチャネルの構成分子として、抗生物質同士の相互作用に焦点を当て、チャネル構造の解明を試みた。炭素13およびフッ素で標識したAmBのメチルエステルを調製し、チャネル会合体における固体NMRによる解析を進めた結果、この2分子間の相互作用の分子基盤の解明に成功した。それによると、隣合う分子間で標識核間距離が約7.5Aであった。これら標識体を連結した二量体を合成し、分子内標識原子間でREDOR減衰が観測され、その距離は非連結体で求めた分子間距離を支持する値となった。これはAmBの樽板モデルで想定されている距離と近い値である。2) 生体膜に形成される脂質マイクロドメイン構造における分子認識:本年度は、マイクロドメイン・脂質ラフトを構成する主要成分であるスフィンゴ脂質の配座と相互作用について検討を行った。特にラフト構成分子であるスフィンゴミエリン(SM)は、通常のグリセロリン脂質とは構造が大きく異なるため、その構造的特徴がラフト形成に重要であると考えられる。そこで、重水素固体NMR(^2H-NMR)および^13C化学シフト異方性(CSA)を測定し、ラフト相および非ラフト相におけるSMのスフィンゴシン骨格の分子配向および運動性を調べた。^2H-NMRおよび^13C-CSAを測定するためには、位置特異的に^2Hまたは^13C標識化したSMが必要となるが、^2H-NMRについては3位、5位および6位を重水素標識したSMを、^13C-CSAについては5位を^13C標識したSMを合成して固体NMR測定に供した。その結果、ラフト形成時におけるSM分子配座および分子配向解析について新知見を得ることができた。
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