アラビアンナイトは、オリエンタリズムという時代的文化的枠組に規定されることによって、現代における一般的中東イメージ構築への地下水脈としての役割を果たしてきた。本研究では、これまで等閑視されてきた中世イスラーム社会研究の第一級資料としてのアラビアンナイトが持つ社会文化史的意義に着目し、世界に散在する種々の文献資料の発掘、整理、分析を通して中東世界における同物語集の原型、社会的受容、変遷を究明するとともに、中世イスラーム文化の基部構造を再構築する。 具体的には、(1)中東イスラーム世界におけるガラン訳アラビアンナイト出現以前(17世紀以前)のアラビアンナイト形成過程、(2)ガラン訳アラビアンナイト出現以降(18 世紀以降)のアラビアンナイト受容による文明間イメージ形成と文学テキスト生成の相互作用を明らかにする。
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