研究課題
本研究の目的は、「銀河団プラズマ中を銀河が運動するさい、プラズマから磁気流体的な抵抗を受け、銀河は宇宙年齢の間に銀河団の中心めがけて落下し、解放されたエネルギーはプラズマ加熱や粒子加速に費やされる」という独創的な仮説を検証することである。初年度にあたる今年度は、以下の成果を得た。1.「すざく」衛星搭載CCDカメラを用い、ケンタウルス座銀河団などを詳細に観測した結果、プラズマは大規模なバルク速度をもたず、ほぼ静水圧平衡にあることを実証できた。2.「すざく」により、Abe111060銀河団の中心部では、プラズマ温度が上昇していることを突き止めた。銀河団の中心部に密集する3つの銀河の相対運動が、プラズマを加熱していると解釈できる。3.「すざく」により、小規模な「ろ座」銀河団の観測を行い、銀河団プラズマ中の酸素や鉄の量は、銀河光度あたりでは、巨大銀河団より一桁も小さいことを見出した。銀河と銀河団プラズマの相互作用によるプラズマ加熱の結果かもしれない。4.XMM-Newton衛星のデータ用いて、近傍の銀河団のプラズマからの熱的X線を撮像分光した結果、プラズマ中の重元素にくらべ、銀河は空間的にずっと中心に集中した分布をもつことを突き止めた。これは銀河の落下を強く示唆する結果である。5.可視〜近赤外の観測により、z=1.2の銀河団中の銀河がすでに強い環境依存性を示すことを示した。これは先天的な銀河形成のバイアスによるものであろう。z=2〜3の原始銀河団を赤外線観測によって調べ、大質量銀河がこの時期に急速に形成される兆候を得た。6.「ずざく」衛星搭載の硬X線検出器を用いて、銀河団からの非熱的な信号を探査した結果、従来より厳しい上限値を得ることができた。これにより、非熱的電波に比べて硬X線信号が強いため磁場は異常に弱いはず、という従来の問題点を回避できる可能性が生じた。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (6件)
Publications of the Astronomical Society of Japan 59
ページ: S351-359
ページ: S327-3338
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 未定(印刷中)
Publications of the Astronomical Society of Japan 59(印刷中)
Astronomy and Astrophysics 462
ページ: 953-963