研究分担者 |
金谷 和至 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (80214443)
青木 慎也 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 教授 (30192454)
吉江 友照 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (40183991)
石塚 成人 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 助教授 (70251030)
蔵増 嘉伸 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (30280506)
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研究概要 |
本研究は、超並列クラスタ計算機PACS-CSを用いて軽いクォーク(u,d,s)全ての真空偏極効果(対生成・対消滅効果)を取り入れた「完全な格子QCDシミュレーション」を行い、素粒子標準模型に関わる素粒子物理学の懸案の解決を図ることを目的とする。 平成18年度は、年次計画に従って研究を実施し、以下の成果を得た。 1.プログラム開発。 現実的なまでに軽いクォークでのシミュレーションを可能とすると期待される領域分割HMCプログラムの開発を年度当初に一応完了し、7月のPACS-CS稼動開始と同時に256ノードパーティション上での計算テストを開始した。その後、特にDirac行列の逆計算部分に様々のアルゴリズム改良・パラメータチューニングを実施し、年度末には実効速度を年度初めの約2倍に加速することができた。現在、当該バージョンを用いている。 2.物理課題研究の計算開始。 平成18年9月より物理計算を開始した。当該時点までに行ったテスト計算により、領域分割HMCプログラムによって、自然界に対応する軽いudクォークでのシミュレーションが可能と判断されたこと、その場合、重粒子についても有限サイズ効果が小さい結果を得るには空間サイズを3fmは必要であること、等の考慮から、格子間隔a=0.1fmの計算について、格子サイズを当初計画の24^3x48から32^3x64,に変更し、256ノードパーティションを用いて10月より本格計算に入った。クォーク質量は、ストレンジクォーク質量msについては、平成17年度までにcP-PACS/JLQCDで行った計算から推測される物理ポイントに固定し、u-dクォーク質量はmud=40,25,15,9,6,4MeVを当面の目標とすることとした。mudの最後の点は、自然界に対応し、この点がシミュレーションできれば格子QCDに取り画期的な成果となる。 平成18年度末までの約7ヶ月の計算により、mud=40,25,15,9,6の点について、各々100,500,500,80,120のグルオン配位が生成され、ハドロン伝播関数の計算が行われた。予備的質量解析によれば、結果は極めて有望であり、メソン質量だけでなく、バリオン質量、メソンの崩壊定数などの分光学的基本量が、実験と極めて良い一致を示している。 以上と並んで、クォーク質量の繰り込み定数及び強い相互作用結合定数の非説動的決定のためのコード開発、ρ中間子の崩壊幅の計算(この方法は将来的にCP非保存の計算などの実現にも重要な技術を与える)等、本課題の目標とするテーマが推進された。
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