研究概要 |
金属-絶縁体転移を起こす物質の中でも特にMott型の金属-絶縁体転移を起こす物質としてV_2O_3、renormalized Peierls絶縁体的な金絶-縁体転移を起こす物質としてVO_2がこれまでよく研究されてきた.我々は硬X線光電子分光(HAXPES)を用いてさらにバルク敏感な高分解能の測定を行いこの両物質の金属-絶縁体転移の機構を議論した.ところでマグネリ相のバナジウム酸化物V_nO_<2n-1>はV_2O_3+(n-2)VO_2の表式で書かれる様に両物質が部分的に混ざった物質であるのでこれらのバルク電子状態を調べることでバナジウム酸化物全体の金属-絶縁体転移機構を解明できる可能性があるので上記2物質に加えて金属-絶縁体転移を起こすV_4O_7(転移温度は250K),V_5O_9(145K),V_6O_<11>(170K)について超高真空中で単結晶試料を破断しすべての内殻と価電子帯の金属相ならびに絶縁体相の光電子スペクトルを高い精度で測定した結果、価電子帯スペクトルの挙動はincoherent部の強度が電子相関の増大とともに強くなる振る舞いを示すものの物質問で大きな違いは無く絶縁体相のV2pスペクトルには大きな物質依存性が観測されることが分かった.なお金属相のスペクトルの物質依存性はこれよりは小さい。この結果よりV-V間のdimerization効果が物質により大きく異なることが分かった.低温になるにつれてgapの開く近藤半導体ではないかと言われているFeSb_2について,HAXPES軟X線PES,極低エネルギー超高分解光電子分光(ELEPES)を行った結果ELEPESもバルク敏感であることならびに低温でもこの物質は金属であることを示すスペクトルを観測した.以上のように金属-絶縁体転移機構を解明できるバルク敏感光電子分光の手法が確立された。
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