研究分担者 |
植田 浩明 東京大学, 物性研究所, 助教 (10373276)
磯部 正彦 東京大学, 物性研究所, 技術専門職員 (70396919)
山内 徹 東京大学, 物性研究所, 技術専門職員 (10422445)
伊藤 正行 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (90176363)
竹下 直 独立行政法人産業技術総合研究所, 強相関電子技術研究センター, 研究員 (60292760)
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研究概要 |
ベータバナジウムブロンズβ.A0.33V205(A=Li,Na,Ag)について高圧下(13GPa域まで)での詳細な輸送特性測定を行い,(1)すべての物質で加圧とともに電荷秩序絶縁体相は抑えられ電荷秩序相に隣接して超伝導相が現れる,(2)さらに高圧域で非超伝導金属相が現れる,(3)得られた圧カー温度電子相図の形は臨界圧近傍での2次元電荷揺動の特徴を示し,また,わずかの不定比性により超伝導相は消える,(4)常伝導相はフェルミ液体挙動を示し,電子比熱は30-55mJ/K2と見積もられる,(5)加圧により残留抵抗は減少するが超伝導転移温度は減少する,などの結果を得,ベータバナジウムブロンズの圧力誘起超伝導はBCS型ではなく,その発現には電荷揺動やキャリアー密度の整合性などが重要な働きをしていること,超伝導相は電荷秩序相や非超伝導金属相と競合していること,などを明らかにした。NMR測定からは,(1)各Vサイトの電子状態が物質により微妙に異なること,(2)高圧下ではサイト間の電荷移動があること,(超伝導相に隣接しているのは電荷秩序反強磁性相であること,などが明らかになった。 ホランダイト型バナジウム酸化物A2V8016(A=K,Rb)は磁化率の急激な減少を伴う金属-絶縁体転移を示すが,(1)電子線回折においてRb物質の低温絶縁体相においてもK物質同様の超周期反射が観測される,(2)Li置換により明確な2段転移が観測される,などの結果を得た。これらから,この金属-絶縁体転移はVO2に見られるようなV4+-V4+非磁性スピンー重項対形成を伴っていることを明らかにした。 他のバナジウム酸化物としては,V6013の金属一絶縁体転移を圧力で抑えると超伝導相ではなく反強磁性金属相が現れることを見出した。他に,一般式AM2V2O8やM2V207(A=Sr,Ba;M=Cu,Ni,Co,Mn)で表される1次元磁性体を開発し,各種磁気転移,構造相転移を観測し,構造と磁気相関,基底状態との関連を明らかにした。
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