研究概要 |
本研究では、内核を構成する物質の解明、内核の成長にともなう地球核の分化作用の解明、外核を構成する金属液体の物性の解明、外核とマントルの反応様式の解明を目標にしている。 具体的には、平成21年度は以下のような成果を上げることができた。 金属鉄合金の高圧相の探索と内核の構成の研究 1.より高温を安定に発生するためにダイヤモンドアンビルの試料部構成や加熱システムの改良を行った。特に圧媒体をMgO,Al2O3,アルゴンなど各種を試みた。 2.FeSi系合金およびFeS系合金などの高温高圧安定相、融点を核の圧力で決定する。FeSi合金、FeNiSi合金の高温高圧相関係を250GPa,3500K以上の条件で決定した。これらの条件でhcp構造相が安定であることが明らかになった。また、Fe3S相が220GPa,3500K程度まで安定であることを明らかにした。 3.FeNi合金、FeNiSi合金等の状態方程式を300GPa以上の条件で決定し、金属鉄合金の密度に対するNi,Si等の影響を評価した。これらの効果は、小さくこれを評価するには圧力精度の向上が不可欠であることが明らかになった。 金属鉄とケイ酸塩および含水鉱物との反応の解明: 4.金属鉄と金属鉄軽元素液体の間のPt,Os,Reの元素分配を100GPaの条件まで明らかにした。Os同位体異常の原因が地球核内部で生じる内核分別作用が原因ではないことが明らかになった。 5.金属鉄ニッケル合金と含水鉱物(含水δAlOOHや含水リングウッダイト)との高温高圧下での反応を解明した。高温高圧下で、含水鉱物は分解し、水素は金属鉄に吸収されることを示した。 金属鉄軽元素系の液体物性と核物質の変形流動の解明: 6.これまでのFe-S系液体の組成と密度関係に加えて、高温高圧下でのFe-Si系の液体の密度を浮沈法によって明らかにした。その結果、Fe-Si系においてもFe-S系と同様、非理想性を示し、負の混合の体積を示すことが明らかになった。
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