研究概要 |
今年度は、以下のような研究を行った。 1.ラマン電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置のついた電子顕微鏡を購入したので、その立ち上げを行った。電子顕微鏡による化学成分の分析については、手軽に定性的な分析が行えるものの、定量性についてさまざまな問題もあることがわかった。今後は、標準試料の作成なども含めこの解決を目指す。 2.化学処理ではなく純粋に物理的な方法で希ガスの濃縮成分を分離する技法は、我々が炭素質阻石であるアレンデについて世界で初めて見つけたものである。その後、同じ技法を普通コンドライトに適用して実験を行なうと、同様な物質は得られるものの、希ガスは濃縮していない事を報告していた。そこで、アレンデと同じ炭素質陽石であるCM2のマーチソン陽石とCV3であるNWA2086陽石について、この物理的手法を適用した。両方の陽石で、同様の物質(フローティングフラクション)は得られたが、希ガス測定の結果では、マーチソン陽石には希ガスが濃縮していないことがわかった。NMA869については、希ガスが濃縮していたが、その濃縮度はアレンデほどではなかった。ラマンスペクトルで炭素物質の形態を調べたが、グラファイトの結晶度などが陽石によってかなり異なることがわかった。 3.タイプ4の陽石は、HL成分がなく、Qだけの成分が残っていることが期待されているので、普通コンドライトのHamlet(LL4),Saratov(L4),NWA869(L4-6)について、酸処理を行い、残渣を用意した。これについて現在希ガスの元素存在度と同位体比を測定している。これらについてもラマンスペクトルで炭素の状態を調べる予定である。 4.デュポンの衝撃合成ダイヤモンドについて、ラマンスペクトルでサイズ効果などを調べた。これについては論文を準備中である。
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