研究概要 |
本年度は,本研究期間5年間の基盤となる初年度五項目計画を実践し、以下の成果が得られた. 1.空の単独・孤立垂直配向単層(SWNT),二層カーボンナノチューブ(DWNT)の生成と供給:独自に開発した拡散プラズマCVDにより,一本のSWNTをプラズマシース電場の方向に配向成長させることに成功したことに続いて,CVD中のSWNT成長と詳細制御された成長基板への入射イオンエネルギーの関係を調べた結果,プロセス時間の増加と共にSWNTの成長量が増加する一方で,ある一定時間以上経過すると成長量が減少し,特に10eV程度の低エネルギー領域で極端にSWNTのエッチングが進行することが判明した.この閾値エネルギーは炭素間の結合エネルギーに起因するものと考えている. 2.新アルカリ-フラーレンプラズマ発生対応の原子内包C_<60>の供給:極小ミラー磁場型電子サイクロトロン共鳴放電プラズマ中でイオン照射法を駆使したところ,電荷活用のアルカリ金属内包C_<60>とは異なりスピン活用の窒素原子内包C_<60>創製においては,照射イオンエネルギー依存性が物理・化学的に複雑であり,むしろ中性のラジカル窒素原子が内包に大きく寄与していることが初めて判明した. 3.これまでの各種内包SWNT(DWNT)の電子輸送特性の詳細測定:従来のアルカリ-フラーレンプラズマにより創製された内包ナノチューブの中でCs@DWNTは,Cs@SWNTに比べてオン/オフ比,移動度,大気安定性等において高性能n型動作FET特性を示すことが分かった.なお,空のDWNTは両極性伝導を示し,C_<60>@DWNTはCs@DWNTのn型とは対照的にp型半導体特性を示した.一方,金属性のC_<60>@DWNTは,室温動作の極めて高い山/谷比を有する負性微分抵抗特性を示すことが実証された. 4.新アルカリ-ハロゲンプラズマ等によるイオン照射実験:ハロゲン負イオン内包のI@SWNTでは,照射時間と共にFETゲート電圧閾値が正にシフトし強固なp型伝導特性が,I^-とCs^+の順次照射の場合には,pn接合形成を示唆するダイオード的電気特性が得られた.次年度以降の計画を先取りして,強磁性金属内包のFe@SWNTを創製した結果,n型伝導と超常磁性を併せ持つ磁性半導体であることが判明した. 5.DNA溶液中電解質プラズマ装置の完備と初期実験:内包が容易と予想される1重螺旋DNAを用いた溶液プラズマ中に微小間隔の2枚電極を設置し,予め開端された空のSWNTを塗布した電極側に各々DNA伸長と加速輸送用の高周波電圧及び直流電圧を重畳印加した.この能動電極上で回収されたSWNTをラマン分光とTEMで解析した結果.1重螺旋DNAを内包したSWNTの創製が初めて実証された.
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