研究概要 |
本年度は,本研究期間5年間の2年目該当の六項目計画を実践し,以下の成果が得られた. 1.空の高品質単層カーボンナノチューブ(SWNT)の生成と供給:独自に開発した拡散プラズマCVD法により合成される空の高品質単独・孤立垂直配向SWNTの損傷効果を含む成長時間発展拡張方程式の導出に成功し,これを用いてプラズマ中の原子状水素がエッチングを引き起こす物質であることを特定できた.このSWNT成長機構詳細解明により,プラズマイオン照射実験への供給の可能性が高まった. 2.新アルカリ-フラーレンプラズマの発生:フラーレンの種類(サイズ)を変えオーブンを工夫してC_<70>及びC_<84>を用いる新アルカリ-高次フラーレンプラズマを生成した.また,原子内包フラーレンの供給については,極小ミラー磁場型ECRプラズマよりもダブルプラズマ電子ビーム方式の方がN@C_<60>の合成効率が高いことを見出した.さらに(Li@C_<60>)+-C_<60>-の準ペアフラーレンイオンプラズマの発生に向けて昇華オーブンを改良して実験を行った結果,有望な成果が得られつつある. 3.内包SWNTの新電子物性評価(FET):アルカリ金属内包のLi@SWNTは,n型のCs.K,及びNa内包SWNTとは異なり両極性半導体特性を発現した.また,電子アクセプターのハロゲン原子内包のI@SWNTは,強固なp型輸送特性を示すことが明らかになった. 4.内包DWNTの新電子物性評価:上記2の新しいプラズマ中の基板バイアス法で合成されたC_<70>@DWNTとC_<84>@DWNTの電圧-電流曲線における負性微分抵抗特性の閾値電圧が,フラーレンの直径が大きく(バンドギャップが小さく)なると直線的に減少する傾向が観測された. 5.pn接合型内包SWNTの新電子物性評価:(Cs/C_<60>)@SWNTに加えて,新アルカリ-ハロゲン(Cs+-I-)プラズマのパラメータを詳細に変えて多くの(Cs/I)@SWNTを創製し電圧-電流特性測定を行なった結果,これらは大気安定な整流(ダイオード)特性を発現することが実証された. 6.DNA負イオン照射SWNTの電気特性とナノーバイオ融合新概念電解質プラズマの導入:1重螺旋DNA内包SWNTのFET特性を測定した結果,塩基の種類に応じ異なる半導体特性を示すことが判明した.また,正負イオンのみから成るイオン液体を空のSWNTを塗布したアノードとカソード電極で挟み込み,液体プラズマ中で基板バイアス法を適用してイオン液体分子内包SWNTの創製を試みた.
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