研究概要 |
本年度は,本研究期間5年間の4年目該当の四項目計画を実践し,以下の成果が得られた. 1.高品質単層カーボンナノチューブ(SWNT)の構造制御成長と供給: 拡散プラズマCVDにおいてガス圧力増加(20~800Pa)と合成温度上昇(600~800℃)に伴い,SWNTの平均直径が太くなる(1.0~1.6nm)傾向を見出した.非磁性金属触媒からのSWNTの低温,高速,高結晶性成長を初めて実現し,これを磁性金属原子内包(@)SWNT創製のためのプラズマイオン照射実験に供給した. 2.高次接合型等内包SWNT/DWNT創製: 新アルカリーハロゲン,アルカリーフラーレン,準ペアフラーレンイオン,電解質プラズマ中の基板バイアス極性反転等の精密制御実験を行い,これまでの各種内包SWNTに加えて(Li@C_<60>)@SWNT,(Cs/I)DWNT(二層カーボンナノチューブ),(Cs/C_<60>)@DWNT,(C_<50>N/C_<60>)@SWNT,各塩基の1重螺旋DNA@DWNTを新たに創製した.また,上記1から供給されたSWNTを用いて高品質のFe@SWNTを創製した. 3.内包SWNT/DWNTの新物性評価: 前年度に不明確であった(Li@C_<60>)@SWNTのFET測定結果は,n型半導体特性が共存する両極性伝導が支配的であり,Li@C_<60>によるバンド構造変調の可能性が示唆された(Cs/I)@DWNT及び(Cs/C_<60>)@DWNTにおいてもSWNT同様にナノpn接合ダイオード特性が実証されたが,SWNTの場合とは異なり量子構造的非対称性が見られず,また大気安定性により優れていることが判明した1重螺旋DNA@DWNTについては,シトシン,チミン,アデニン,グアニンの内包により各々強固なp,両極性,n優勢の両極性,n型伝導に変化した.C_<60>@SWNT-及びDNA@SWNT-FETは紫外可視域光照射に対して閾値電圧シフトとして,C_<59>N@SWNT-FETはコンダクタンス低下としての光スイッチング特性を発現することを見出した.さらに後者においては,低温でキャリア増倍機構の存在を示唆する大きな光誘起電流が初めて観測された. 4.超伝導発現の探索: カーボンナノチューブ超伝導現象の解明にはその薄膜としての物性を調べる必要があるので,電極間にCa@SWNTをネットワーク状に配置した薄膜トランジスタの電流-電圧特性を温度昇降に対して測定し,高性能n型半導体特性を得ている.しかし,この場合元になる空のSWNTとして,超伝導発現には半導体ではなく金属SWNTが必須であるので,成長制御に加えて化学的方法等によるその半導体-金属分離技術の確立の実験を並行して行ってきた.
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