研究概要 |
本研究では,化学動力学基礎理論において最も重要なターゲットであるBorn-Oppenheimer描像を超える分子の動力学理論を創成し発展させた.特に原子核の運動とカップルする電子動力学の展開を中心として,次世代の超高速化学反応学と反応制御をおこなうための基礎理論を創始し完成させた.多くの優秀な学生や博士研究員と共同研究を遂行し,次世代理論分子科学者の育成をも併せて行った. 幸い,Born-Oppenheimer近似を超える本格的な基礎理論の構築に,世界に先駆けて成功し,その検証も終えている.この理論は,電子・核同時動力学に関する全く新しい考え方に立脚しており,便宜的かつ対症療法的に提案されていた底の浅い従来の理論とは根本的に異なるものである.量子化学および化学反応動力学における非常に重要な基礎理論であり,Born-Oppenheimer描像を超えていかねばならない21世紀の化学理論の基礎となるものだと認識している.これらの理論は,実際の分子(ジボラン,ギ酸二量体,フォルムアミド,その他)に応用して,動的電子化学反応論としての新たな反応論としての解析なども行った.また,本理論を,強レーザー場中の非断熱電子波束と原子核波束の理論へと発展させた.研究成果は,オリジナル投稿論文としてのみならず,確立された理論としてAdv.Chem.Phys.誌,Phys.Chem.Chem.Phys.誌,Chem Rev.誌などから依頼され.総説の形で世界に広く紹介した.
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