研究課題/領域番号 |
18105002
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 寛治 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 教授 (30106629)
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研究分担者 |
高尾 俊郎 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助手 (00313346)
大石 理貴 東京工業大学, 大学院理工学研究科, 助手 (20376940)
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キーワード | クラスター錯体 / クラスター触媒 / アルカン / ビピリジン / ピリジン二量化 |
研究概要 |
ルテニウムの三核ポリヒドリドクラスター{(η^5-C_5Me_5)Ru}_3(μ-H)_3(μ_3同H)_2(1)はアルカンと加熱条件下で反応し、その炭素-水素結合を切断する能力を有する。本年度はアルカン官能基化達成の第一歩として、アルカン由来の錯体への官能基導入を検討した。錯体1と2-メチルブタンの反応生成物であるジルテナアリル錯体に官能基を直接導入することは困難であるため、錯体1を酸化してカチオン錯体としたのち求核剤の導入をはかった。錯体1をフェリシニウム塩を用いて二電子酸化すると配位した炭化水素の骨格転位が起こり、Ru_3骨格上にC_3リングが配位したトリスカルベン錯体の2価カチオン2が生成した。トリスカルベン錯体2と水との反応により生成するモノカチオン性架橋ヒドロキソジルテナアリル錯体3をジエチルアミンで処理すると脱プロトン化とともに炭素-酸素結合生成反応が進行し、クラスター上の炭化水素配位子への酸素官能基導入が達成された。さらに、ルテニウムの二核ポリヒドリドクラスターを触媒とするピリジンの脱水素二量化反応を開発した。触媒量のテトラヒドリド錯体{(η^5-C_5Me_5)Ru}_2(μ-H)_4(4)あるいはボスフィドヒドリド錯体{(η^5-C_5Me_5)Ru}_2(μ-PR_2)(μ-C_6H_6)(μ-H)(5)の存在下、4位に置換基を持つピリジン類を飽和炭化水素溶媒中で加熱すると、位置選択的に2位の炭素-水素結合が切断されたのち、引き続いてピリジル基の還元脱離が起こりビピリジンが生成することを見出した。本反応は電子供与性置換基を持つピリジンから電子求引性置換基を持つピリジンまで幅広く適用可能であり、従来法を凌ぐ優れた合成手法であるばかりでなく、クラスター錯体の特長を活かした反応であり、クラスター化合物の有用性を示すものである。本触媒反応で得られるイソニコチン酸エステルの二量体は太陽電池の研究には欠かせない化合物である。本反応の重要性を考え特許を出願した。投稿論文は準備中である。
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