研究概要 |
平成19年度の研究計画の第1項目目に挙げた「架橋シクロペンタジエニル配位子を有する四核ルテニウムポリヒドリド錯体の合成」に関しては、C_6鎖で連結されたCp*系、シクロヘキサンジイルを含む炭素鎖で結ばれたCp*系の2つの系について、ルテニウムポリヒドリドフラグメント導入を達成し、X線回折によって構造を決定することができた。現在投稿準備中である。また第2項目の「五核および六核ポリヒドリドクラスターの合成」に関しては、四面体型Ru_4クラスターをもとにして三方両錐型およびピラミッド型Ru_4Mクラスターの合成を達成した。さらにピラミッド型Ru_5クラスターを出発原料に用い正八面型Ru_5Mクラスターを高選択的に合成する方法を開発した。この成果についてはすでに学会発表し、現在投稿準備中である。第3項目の「三核グラスターによるアンモニアの活性化」に関しては、Ru_3,Ru_2Os,RuOs_2,Os_3骨格を有する三核クラスターと酸素化剤の反応によって三重架橋オキソクラスターを合成した後、アンモニアとの反応をNMR分光法を用いて解析し、クラスター構造が異方的であるほど窒素-水素結合の切断過程が加速されることを明らかにした。Ru_3クラスターとRuOs_2(μ_3-O)クラスターでは、 N-H結合切断活性の大きさは100倍以上に達する。本基盤研究の大きな課題である「クラスター触媒反応の開発」に関しては、ピリジンの触媒的脱水素カップリング反応を開発するという大きな成果を挙げることができた。本触媒反応は、クラスター錯体そのものが触媒として作用していることを実証した最初の例であり、極めて意義の大きな成果である。この触媒系により、これまで効率的な合成法のなかった4,4'-位にエステル基を有するビピリジン類を短工程で得ることができるようになり、反応機構の面だけでなく有機合成的側面から見ても重要な成果となっている。JACS誌に投稿するとともに、特許申請した。
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