研究概要 |
本申請研究は合成化学の分野を飛躍的に発展させるために、従来の「単核錯体の反応化学」を超越する新分野の開拓を目指して進められたもので、21年度には以下の成果をあげることができた。 本研究の基礎を成す新規なクラスター反応場の構築とその評価に関しては、異なる種類の金属から構成されるクラスター反応場の構築に成功し、その立体・電子的異方性を評価するとともに、基質との反応を検討し反応場の特長を明らかにした。異種金属の組み合わせとしてはRuとIr、RuとOs、IrとZrの3種類について検討した。特に同族のRuとOsを含む系に関しては、その構造と反応性に関して顕著な異種金属効果が観察された。また二つのRu(μ-H)_4Ruユニットを架橋型ビス(シクロペンタジエン)配位子で連結することにより、先例のない平行四辺形型反応場を構築することに成功した。また、電子的性質の異なる支持配位子を同一分子内に持つ、いわゆる混合配位子型ポリヒドリドの合成を達成した。π受容性を持たない1,4,7-トリメチル-1,4,7-トリアザシクロノナンとペンタメチルシクロペンタジエンを組み合わせたもので、大きな電子的異方性が期待されるものである。 一方、クラスターに特徴的な反応の開発と機構の解明については以下の成果を挙げることができた。Ruの三核反応場でベンゼンのC-H結合を切断しベンザイン中間体を発生させるとともに、アルカン由来の炭化水素配位子との間に炭素-炭素結合を形成させ、さらに加圧水素と反応させることによりアルキルベンゼンを得ることに成功した。
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