研究概要 |
高分子の1分子鎖の大きさは数10nmであることから、本研究では、10-100nmの空間領域の高分子科学に近接場光学顕微鏡という新たな手段を開発し挑戦してきた。ナノメートルスケールの空間分解能と単一分子をも検出できる高感度という優れた特性をもつ近接場光学顕微鏡を用いて、高分子科学における基礎的重要事項を単一分子鎖レベルから実証的に研究することを目指した。平成19年度は、昨年度に行った観測手段・研究体制の整備をもとに、以下のような項目について、分子鎖レベルでの構造と高分子機能を探求する基礎研究を展開した。 1, 高分子の単一鎖の延伸配向に関する研究 高分子固体試料の延伸にともなう分子鎖配向と緩和現象について、マクロ変形・力学物性とミクロな分子鎖形態の相関を明らかにした。高分子鎖が延伸や流動により配向することはよく知られているが、分子鎖形態が配向していることを証明した実験はこれまでになされていなかった。本研究では、近接場光学顕微鏡を用いて分子鎖の実像を観測することに成功し、延伸による分子鎖配向とその後の緩和挙動について、初めて分子鎖の配向緩和挙動を明らかにし、高分子材料の重要な特性である配向と緩和という物性を分子レベルの形態変化から解明した。 2, 高分子の2次元空間における分子鎖形態 高分子バルクや高分子超薄膜などの界面・表面が形成する2次元空間や、ブロック共重合体のミクロ相分離構造という制限空間における高分子鎖の特異な凝集形態と配向挙動を、近接場光学顕微鏡による分子鎖の実像を観測により明らかにした。
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