研究課題
本年度は、これまで4年間で得られた実験データを基に、本申請の最終目的である光圧を用いたタンパク質及び有機化合物の結晶化やそのメカニズム解明を念頭に研究を行った。下記に具体的な研究結果及びその意義、重要性について列記する。1.光圧によるα-アミノ酸、無機塩の結晶化(レーザー捕捉結晶化)α-アミノ酸であるアラニン、フェニルアラニン、トレオニン、さらには無機塩である塩化カリウムの重水または軽水溶液を試料とし、集光レーザーの光圧による結晶化に成功した。この結果により、本手法の結晶化技術としての高い汎用性を示すことができた。2.レーザー捕捉結晶化における塩効果グリシン及びアラニンの重水溶液に塩を加え試料とし、1と同様に結晶化を行った。結晶化に要する時間の塩濃度依存性を調べた結果、それぞれの化合物の塩濃度に対して上下に変化する溶解度曲線と同様の傾向を示すことを見出した。この事は、本結晶化が溶液内の液状クラスター密度に依存していることを示しており、本結晶化メカニズム解明への大きな一助となった。3.光圧による液-液相分離と操作光圧により作製した液-液相分離を経由した高濃度液滴を、集光点を操作することによりその位置を操作することに成功した。この結果より、均一な溶液内に高濃度領域を誘起し、それを操作する一連の動作が可能となったことを示しており、新しい分子操作技術として非常に興味深い結果を得られた。4.光圧によるタンパク質の分子集合体形成昨年度と同様、試料としてタンパク質であるフェリチン誘導体を用い、その重水溶液において1と同様の実験を行った。照射数秒から数分後には集光スポットよりもはるかに大きな巨大二次元集合体の形成以外に、界面への集光によりロッド状の集合体の析出が確認された。集光点の違いによる析出物の相違は、光圧場における分子集合プロセス及びメカニズムを解明する鍵となる知見を与え、分光学的なアプローチによりさらに詳細が明らかと成るであろう。これらの研究はすべて世界に先駆けて行われており、光圧化学の新しい研究分野の開拓にあたり大きな役割を果たした。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 12件) 学会発表 (21件) 備考 (1件)
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