研究概要 |
本研究では,詳細化学反応機構を考慮に入れたグリッド・コンピュータによる超大規模直接数値計算(DNS),高解像度時系列粒子画像速度計(PIV)とOHラジカル及びCHラジカルの高時間分解能平面レーザ誘起蛍光法(PLIF)等を組み合わせた高解像複合光学計測を用いて燃料液滴の蒸発・混合及び燃焼過程,不均一燃料濃度及び不均一温度分布を有する予混合気の自着火及び火炎伝播機構等の実用的な燃焼器の高効率化と低環境負荷化に重要となる成層・混相乱流燃焼機構を明らかにし,それらに基づく高度乱流燃焼制御技術を確立することを目的としている.平成20年度は,前年度までの研究に引き続いて,数値的研究では,詳細化学反応機構と物性値・輸送係数の温度依存性を考慮に入れたDNSを拡張し,メタン・空気予混合気の乱流中での自着火・火炎伝播機構を解明することに重点をおいて研究を行った.HCCIエンジン内の燃焼機構を明らかにするために,当量比変動及び温度変動を有する予混合気の自着火・火炎伝播機構を検討し,その結果,自着火及び火炎伝播機構は,予混合の温度変動に大きく依存することを明らかにし,反応動力学的に自着火領域と火炎伝播領域を識別する方法を提案した.また,ICエンジン内燃焼のDNSを実現するために, DNSを閉容器内乱流燃焼に拡張し,壁面と火炎の干渉機構を明らかにした.実験的研究では,昨年度までに開発した複合光学計測技術を用いて不均一予混合気の局所火炎構造と壁面近傍の乱流火炎構造などを明らかにするために光学計測が可能な閉容器燃焼器を新たに開発し,壁面近傍の火炎伝播特性などの基本特性を明らかにした.さらに,燃焼室内の酸素濃度と温度の不均一性が非定常燃料噴霧燃焼に与える影響を急速圧縮装置を用いて検討し,有害排出物の生成が着火までに噴霧内へ導入される酸素とエンタルピの量により支配されることを明らかにした.
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