研究概要 |
GaAs半導体マトリックス中に分散する六方晶の結晶構造をもつ強磁性金属MnAsナノ微粒子(直径~5nm)を含む単電子スピントランジスタ構造を作製し、微粒子における極めて長いスピン緩和時間(10μs)(μs=マイクロ秒)を観測した。この値はこれまで報告された金属ナノ微粒子のスピン緩和時間として最も長く、最近報告されたCo微粒子のスピン緩和時間より2桁(約100倍)、バルク金属と比べると7桁(約10,000,000倍)も長い値である。この成果は、強磁性微粒子の超高密度スピンメモリや再構成可能(リコンフィギャラブル)なスピントランジスタ等、次世代のスピントロニクス・デバイスへの応用につながると期待される。また、強磁性半導体GaMnAsの超薄膜を量子井戸として2重障壁共鳴トンネルダイオード構造を作製し、共鳴トンネルスペクトロスコピーというユニークな手法を用いてGaMnAsの価電子帯構造とフェルミ準位の位置を明らかにした。GaMnAsのフェルミ準位の位置についてはここ数年論争があったが、従来のモデルで考えられているような価電子帯の中ではなく、禁制帯中の不純物バンド中に存在すること、共鳴トンネル効果によりトンネル磁気抵抗が明瞭に増大する現象などを実験的に示した。
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