研究概要 |
高感度甘味受容膜について,その受容機序の解明を行った.また,本成果に基づく新たな展開として,糖と同様に電荷をもたないカフェインの検知に向けた研究開発を行った. 味覚センサチップに関しては,プラスチック基板上にチップを形成し,応答電位を得ることに成功した.10回の繰返し測定における応答電位の標準偏差は平均値に対して,塩味が2.75%,渋味が3.88%,苦味が16.6%であった.さらに,味覚センサの小型化を図るため,USBを介してデータ処理用のPCと接続することを想定し,フロントエンドアンプ,LPF(低域通過フィルタ)とマイコン等をUSBメモリサイズの基板上に搭載したプロトタイプを試作した.このプロトタイプ単独を評価した結果,電気的特性として所定の性能が得られた.なお,電源もPCから供給されるため,味覚センサの小型化に寄与している. 匂いセンサに関しては,生物の嗅上皮を模倣する人工嗅上皮型匂いセンサとして,くし形電極をベースとしたセンサと匂い吸着単分子膜を用いるセンサ,および表面感応膜QCMセンサによる匂い測定を検討した.単分子膜電極では分子の部分構造を認識する分子認識部は実現されたが,匂い吸着層の安定性に課題が残った.QCM測定では酢酸とアンモニアに関しては応答性が良いセンサの作製が行えた.また,水晶振動子の各種金属検知膜をナノサイズ化して作製し,各匂い物質に対する基本検知特性を検討した.物理吸着に依存するものの,表面をナノサイズ化することによって,通常の表面状態とは大きく異なる特性を見いだした.その結果,物質に対する検知特異性があり,その物理吸着メカニズムについて検討した.また,電極表面をナノサイズ化する諸条件(温度,時間等関数)についても検討を行い,最適な条件を見いだした.
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