DELLAタンパク質はGAの信号伝達を負に制御する。イネのDELLAタンパクSLR1質は、GA受容体であるGID1がGAと結合した状態の場合、これらと相互作用することにより、F-boxタンパク質であるGID2の標的とされ分解される。これまで我々が収集してきたイネGA関連変異体中のSLR1タンパク質量は、変異体の矮性度とよく一致しており、SLR1タンパク質量が多ければ多いほど矮性度合いも強くなる。しかし、F-box変異体であるgid2は、これが当てはまらず、SLR1蓄積量は他のGA関連変異体よりも多いにも関わらず、矮性度合いはgid1やGA欠損変異体のcpsなどに比べて弱い。この現象はSLR1タンパク質のGA抑制に関する未知の分子機構に起因すると考え以下の解析を行った。gid2をGA合成阻害剤処理やGID1タンパク質機能欠失させるとSLR1量は減少し、GA処理やGID1過剰発現状態ではSLR1量は増加した。この際、GA合成阻害剤処理やGID1機能欠失はgid2の矮性度を増加させた。一方、GA処理やGID1過剰発現はgid2の矮性度合いを緩和した。これらの結果は、gid2変異体中ではSLR1のGA信号伝達抑制活性がGAやGID1の量により制御されていることを示している。また、GA信号伝達により発現が制御される遺伝子、GA20ox1、GID1、SLR1の発現を調べたところ、これらの発現はgid2変異体中でGAレベルにより制御されていることが解った。これらの結果から、SLR1のGA信号制御活性はこれまで信じられていたGA-GID1-SLR1複合体がF-boxにより認識されて分解に導かれるために引き起こされるだけでなく、GA-GID1-SLR1複合体が形成されること自体が、抑制活性の脱抑制化を導いていると結論した。
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