GA_4またはGA_3と結合したイネGID1結晶を用いて1.9Aの解像度でX線解析を行い、GID1タンパク質構造の全体及びGA結合サイトの構造を明らかにした。 GID1受容体の全体構造はアミノ酸配列の相同性から予想されたように、酵素の一種であるHSLの構造とよく似ていた。また、HSLの活性ポケットの部分がGA結合ポケットに対応していた。HSLの活性部位を構成する2つのアミノ酸残基(Ser198とAsp296)やオキシアニオン結合部位はGID1にも保存されており、これらの部位がGA分子のC-6に位置するカルボキシル基と水素結合を形成することが分かった。また、GAとGID1との結合はこれらの水素結合以外に疎水的結合も関与していることが分かった。 解析された立体構造に基づき、GAとの結合に関与することが予想された残基をアラニンに変異させ、GA結合能を検討した。その結果、17種類のうち13種類について結合活性はなくなり、残りの4種類についても大きく活性が低下した。このことは、構造解析により推定されたGA結合に関与するアミノ酸が、実際にGAとの結合に重要であることを示している。 HSLは微生物、動物、植物に広く存在する酵素タンパク質であることを考えると、高等植物に存在するGA受容体は、HSLを起源として植物の進化過程で確立されたと推論された。そこで、この仮説を検証するために、GID1を有する最も原始的生物と予想される小葉類(シダの一種)のSelaginellaGID1 (SmGID1)と進化が進んだイネのGID1 (OsGID1)のGA結合に関与するアミノ酸残基の比較を行い、GID1はHSLを起源とし、GA受容活性を獲得した後も、植物進化の過程で活性型GAの固有な構造を特異的に認識するべく構造を調整し続けたことを明らかにした。
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