研究課題
鳥類から発見した新規脳分子である生殖腺刺激ホルモン放出抑制ホルモン(gonadotropin-inhibitory hormone : GnIH)による新しい生殖制御機構の解明には、他の脊椎動物からGnIH同族ペプチドを同定して、GnIHとGnIH同族ペプチドの生理作用、作用機構、発現制御機構を明らかにする必要がある。本年度は、次の重要な成果を得た。(1)霊長類(ヒトとサル)、哺乳類(ヒツジなど)、鳥類(ムクドリなど)、両生類(イモリ)、魚類(キンギョなど)、無顎類(ヌタウナギ)の脳からGnIH同族ペプチドを同定して、新規脳分子であるGnIHの起源は無顎類に遡ることを明らかにした。さらに、GnIHの起源と分子進化を明らかにするために、原索動物(ホヤ、ナメクジウオ)と無脊椎動物(タコ)の脳からGnIH同族ペプチドの同定を試みた。(2)霊長類、哺乳類、鳥類では、GnIHとGnIH同族ペプチドは脳下垂体の生殖腺刺激ホルモン産生細胞と視床下部のGnRHニューロンに作用して生殖腺刺激ホルモンの放出と合成を抑制することを明らかにした。(3)GnIHとGnIH同族ペプチドは生殖腺刺激ホルモンの放出と合成を抑制して生殖腺の発達と機能維持を抑える働きがあることを明らかにした。(4)GnIHとGnIH同族ペプチドの発現をメラトニンと性ステロイドが制御することを明らかにした。(5)GnIHの標的細胞内における分子カスケードを解析して、GnIHはGnIH受容体(GPR147)と結合してcAMP合成を抑制する結果を得た。(6)生殖腺に発現するGnIHは局所作用により性ステロイドの合成を制御する結果を得た。これらの成果はいずれも学術的に重要であり、生殖機能障害の新しい治療薬の開発に向けたGnIH研究の基盤となる。
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