研究概要 |
ミトコンドリアのマトリクスや内膜へ移行するタンパク質は外膜トランスロケータTOM40複合体によって外膜を通過後,内膜のトランスロケータTIM23複合体により内膜を通過,または内膜に組み込まれる。TIM23複合体サブユニットTim23とTim50はともに膜間部にドメインを持ち,コイルドコイルを作って相互作用する。そこで両者のコイルドコイル領域の各種変異体を多数作成し,インポートへの影響を解析した。その結果,膜間部におけるTim23-Tim50相互作用は,外膜から内膜への前駆体の受け渡し,およびマトリクス側でのモータ機能の制御という2つの重要な役割を担うことが明らかになった。 Tom40やポリンなど,ミトコンドリア外膜のβバレル型膜タンパク質は,外膜のTOM40複合体を通っていったん膜間部に移行した後,外膜のSAM/TOB複合体を介して外膜に組み込まれる。しかしこうしたアセンブリー経路が,どのような仕組みでマトリクスや内膜に向かう経路から分岐するのか,small Timタンパク質の具体的機能は何かなど,まだ不明な部分が多い。そこでマトリクスや内膜,膜間部に移行する前駆体部分をTom40のN端に付加し,ミトコンドリアへのインポートに際してどちらの仕分けシグナルが優勢になるかを解析した。マトリクス行きシグナルは,Tom40部分の外膜への経路より優勢であるが,Tom40部分が内膜を通過できず,中間体として留まる。一方内膜行きシグナルの場合は,Tom40部分はSAM/TOB複合体と相互作用するステップまでは進めるが,その先のステップに進めなくなる。内膜行きシグナルが切断される膜間部行きシグナルの場合は,Tom40部分は正常に外膜に組み込まれる。またsmall Timタンパク質はTom40部分の外膜透過を駆動する機能と,その後SAM/TOB複合体に正しく受け渡す機能の,2つの役割があることも明らかになった。
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