研究概要 |
(1) ミトコンドリア外膜から内膜へのタンパク質移行の仕組みの解明 ミトコンドリアのマトリクスや内膜へ移行するタンパク質は,TOM40複合体によって外膜を通過後,内膜のTIM23複合体により内膜を通過,または内膜に組み込まれる。両複合体の相互作用はこれまで見いだされていなかったが,今回,in vivo部位特異的光架橋により,TOM40複合体のTom22とTIM23複合体のTim50,Tim23の相互作用を検出した。両者の相互作用は一時的,もしくは動的なものであるため,光架橋のような方法を使わないと見いだしにくかったと考えられる。外膜と内膜のトランスロケータが動的に相互作用することにより,外膜から内膜へと効率的に基質タンパク質が受け渡されることが明らかになった。 (2) 受容体Tom20の改変 ミトコンドリアタンパク質のプレ配列受容体であるTom20を改変し,野生型Tom20には依存せず,改変Tom20にのみ依存してミトコンドリアに取りこまれるような新規プレ配列を選別する酵母スクリーニング系の構築を試みた。酵母ミトコンドリアのCoxIV(シトクロム酸化酵素のサブユニット)の遺伝子欠損株は呼吸能がないが,ここにプラスミドでCoxIV前駆体の遺伝子を供給すると,発現産物がミトコンドリア内に移行し,シトクロム酸化酵素に組み込まれるため呼吸能が回復する。ここで,Tom20を改変Tom20に置き換えると,CoxIV前駆体のプレ配列が認識されないため,CoxIVはミトコンドリアに移行できず,呼吸能は回復しない。プラスミドで供給するCoxIV前駆体遺伝子のプレ配列部分にランダムに変異を入れ,この中から,CoxIV遺伝子欠損株の呼吸能を回復できるものを選別することで,改変Tom20に認識される変異プレ配列の探索を試みた。
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