平成21年度は、好熱菌のATP合成酵素(F_0F1)の結晶化に全力を注いできた。回転位置停止位置をそろえるために、c-ring-ε-γを遺伝子的に融合したF_0F1を用いて、さまざまな界面活性剤で可溶してゲルロカで単分散になる条件、および活性を失わない条件をさぐった。ついで、標品を長時間放置してその安定性を検定した。その結果、すべての点でオクチルマルトシドが好適であることがわかったので、結晶化条件の探索を進めたところ、ある条件で結晶が得られた。しかし、結晶を集めて溶かして分析したところ、αとβサブユニットしかなかった。さらに調べると、意外なことに、沈殿剤としてもちいたポリエチレングリコール存在下ではこのF_0F1は不安定であり、おそらく混入するわずかなプロテアーゼによって分解されて残ったα_3β_3が結晶化したと思われる。F_0の回転子と固定子の間のふらつきがこの不安定性の原因と考えて、今度はc-ring-aを遺伝子的に融合したF_0F1で、結晶化を試みることとした。また、精製度をたかめてプロテアーゼをできるだけ除くようにした。精製品は単分散である。現在、ポリエチレングリコール存在下の安定性を検定している。
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